一位一刀彫とは

2021/06/17

# 知る・学ぶ

各地に一刀彫と名の付く工芸が存在しますが、今回紹介するのは飛騨高山に伝わる一位一刀彫についてです。一位一刀彫の歴史や文化などを詳しく紹介いたします。

一位一刀彫の歴史

江戸末期に活躍した、高山出身の根付彫刻師、松田亮長が一位の木目の美しさに着目し、蛙蛇、亀鶏、動物等の作品を切味鋭いノミや小刀の刃痕を生かした作品を作り出したのが一位一刀彫のはじまりとされます。その後、数々の名人が現れ今では根付だけでなく置物や香合など多くの一位を使った彫刻が作られるようになりました。

一位一刀彫の一刀彫とは一本のノミで彫りだすわけではなく、一刀一刀心をこめてノミ痕を残すことからその名前がついたとされます。木目が美しく、年月が経つにつれ茶褐色になり艶が出てくる「一位の木」を材料に、加飾、着色をせず、彫刻刀の技のみで鋭く彫り上げるのが特徴です。また、良質な素材を選び木目の流れ、赤太(あかた)、白太(しらた)といった木の色合いを巧みに利用する、それが一位一刀彫の技となっています。

岐阜県の木にもなっている、「一位の木」の語源は、かつて、天皇即位の折りに「笏(しゃく)」として献上したところ、他の材より美しく質が高かったので「正一位」という最高の位が与えられた等の説があります。

現在の一位一刀彫

一昔前は飛騨高山の一位一刀彫といえば結婚の結納で使われた高砂人形でした。また干支や七福神のお面などもよく作られました。現在も継続して制作されていますが、だんだんと少なくなっているのが現状です。理由は建築様式の変化(和式から様式へ)が一番の影響です。そういった中でも伝統を残すために新しいデザインも作られるようになってきました。

未来に残せる作品がこれからも少しでも増えていくことを期待したいですね。

 

まとめ

山紫水明の地、飛騨高山に伝わる一位一刀彫は彩色をしないため派手さはありません。しかしながら、長く飾れば飾るほどに味のある愛着のある作品となっていくのではないでしょうか?
高山を訪れた際には是非一位一刀彫を見てみて下さい。